Noctilux 50mm f1.0 (E58)
 

Lens Data

Lens Unit

Lens Photo


製造年:1975年頃
製造本数:約3500本
画角:47度
重量:593gg
構成: 6群7枚
フィルター径:E58
最短撮影距離:1m


Lens Impression

1975年に初代の非球面f1.2から交代したf1.0のノクチルックスは大きく4つに分類されます。
1st=フィルターサイズE58の外付けフードのタイプ、
2nd=フィルターサイズE60のピンはめ込み式フードのタイプ
3rd=フィルターサイズE60のバネ爪はめ込みフードのタイプ
4th=フィルターサイズE60のフード内臓のタイプ

---以下、「オールドレンズの最高峰(3)」から抜粋---

初代ノクチルックス50mmf1.2を設計したのは独ウェツラーのHelmut Marx とPaul Sindelである。史上初の非球面レンズと高屈折率ガラスを使用した画期的な大口径レンズは、世界中の話題をさらいはしたものの、大変なコスト喰いでもあった。手磨きの非球面レンズの歩留まりは大変低く、レンズが発売された1966年当時のライツ社では許容された商品コストなのかもしれないが、経営が急速に悪化した1970年代前半にはいわばお荷物となっていた可能性も高い。
1974年にエルンスト・ライツ社はスイスのウィルド社に買収され、生産現場は大きく混乱する。特にドイツ国内では1975年の50周年記念モデルを最後に実質的に生産がストップし、R型はポルトガル、M型はカナダ、、、結局よくわからない、、みたいな状況が1980年代半ばまで続くことになる。
f1.2の生産が終了した中で、マンドラー博士は、より合理的な設計で、さらに明るいf1.0のノクチルックスの設計を完成させる。もっともコストのかかった非球面研磨を止め、新開発の超高屈折率ガラスを活用しつつ、7枚に増やしたガラス枚数と空気間隔を上手く生かしたレンズ構成によって、比較的コスト効率が良く、さらに明るい大口径レンズへと進化させたのである。

タイプ900403。これがノクチルックスに使用されているライツ社独自開発・独自生産と言われる高屈折率・低分散ガラスのコードである。屈折率が1.9005,分散(アッベ数)が40.3を意味している。数字を見ただけで屈折率が高いことがわかる。ではキヤノンの時と同じように、Noctilux f1.0の使用ガラスをチャート上にプロットしてみよう。(右図)
キヤノンと比べて全体的に上方すなわち高い屈折率のガラスを集中して使用していることがよくわかる。特に第2,5レンズは驚異的な位置にある。キヤノンf0.95から10数年を経て、新種ガラスはさらに進化していた。
この前から2番目と5番目に使用された超屈折率レンズがライツ社が1970年頃に自社開発した「タイプ900403」ガラスである。プロットすると、この屈折率が1.9以上で、分散が40を超えるガラスがいかに特異な高屈折率・低分散ガラスなのかが分かる。
なお、この900403ガラスは12種類の含有物を1000度に高めて融解させる技術が非常に複雑で歩留まりが低く、非常に高価だった。当時ポピュラーであったBK7というガラスと比較すると120倍の価格であったということが、「50 years Leica M(Guenter Osterloh)]に記載されている。なお重量も重く、BK7の約2倍あったとのことである。

全身クリスタルガラスの超美人E58

The Leitz Glass Laboratory(ライツガラス研究所)は1949年から1989年頃まで活動していた。ウェツラーの北東約30キロのところにあるMarburg(マールブルク)にあるマールブルク鉱物学研究所のGustav Weissenbergヴァイセンベルク博士を中心としてトリウムを含有しない酸化物による高屈折低分散のガラスやアポクロマートレンズの色収差の補正などの研究を行っていた組織である。
放射性物質に代わり、酸化ランタンを中心に使用する新開発のガラスは、それだけでは結晶化が強すぎてひび割れや脈理が多く、ランタンに加えて、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化イットリウムなどを適切に配合することによって安定して生産が可能になるが、ノクチルックスに使用された900403は特に酸化ジルコニウムの含有量が多く約8%含んでいる。さらにこれらの混合物は融点が高く、白金るつぼ自体の融点に近づく非常に困難な作業であったらしい。
ノクチルックスには、戦前から戦後直後のレンズであれば当たり前であった屈折率1.5-1.6台のレンズなどは、ほとんど「使われていない」のだ。
これは個人的な印象なのだが、以前からノクチルックスE58を前方から覗き込むと、なんとなく黒が深く、反射が煌めくような感覚を受けていた。こうして確認してみると、これだけ屈折率の高いレンズのみ使用していれば、まさに「全身クリスタルレンズ」といっても過言ではないのかもしれない。
なお、900403ガラスはE58まではドイツで生産され、E60以降はカナダのエルカンで製造されたものが使用されており、1993年に製造が中止されてそれ以降は別のガラスに置き換わったと言われているが、真偽のほどは分からない。

 Photos with Noctilux E58
 
Comment
2021
Marunouchi,Hibiya
(丸の内、日比谷)

コロナ禍で開かれたクリスマスマーケットなので、とくに並ぶこともなく入れました。
開放で撮っても、少し絞っても、とても美しい描写で心を弾ませてくれるレンズです。
光源の描写はよく観察すると、周辺部にはかなりのサジタルコマ収差も見られ、定量的には課題のあるレンズなのでしょうが、それを上回る全体的な描写の素晴らしさが味わえます。

2020
Minowa,Minamisenju
(三ノ輪、南千住)
都内でも数少ない戦後の面影を残す三ノ輪、南千住地域ですが、それでも徐々に建て替えが進んでいくのは仕方のないことですね。
でもまだ「トマソン芸術」のドアなども見ることが出来ます。

都電荒川線の始発三ノ輪橋の駅はそのまま残ってほしいですし、その駅の入り口でビル1階がトンネルになっている梅沢写真会館ビルなどはぜひ文化財として残してほしいです。

     
 
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